2021.03.02
COACHING DOJO編集部
2021.03.02 / 25 min read
この記事の監修者
濱崎 翔吾(銀座コーチングスクール認定コーチ)
東京大学経済学部経営学科。心理学や心理療法、チームビルディングなどについて学ぶ。スタートアップ数社でのインターン経験、Youtubeでの情報発信経験を経て、ステラー株式会社にジョイン。現在はコーチングを通して多くのクライアントの目標達成を支援している。
コーチングの真価をわかりやすく伝え、みなさんのコーチングとの”出会いの場”を創出いたします。
上司になると難しいのが、部下育成や部下とのコミュニケーションですよね。 マネジメントスキルとして注目されているコーチングですが、研修や本で学んでいて「ティーチング」と比較されているのを見る方も多いのでは。 「コーチングとティーチングの違いは何?」「どんな場面で2つを使い分けたらいい?」などの疑問を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、部下の成長を加速するために知っておくべき、コーチングとティーチングの違いをご紹介します。某コーチングスクール認定コーチの立場から、メリットやデメリット・場面別の使い分けも具体的にご紹介するので、明日からの部下とのコミュニケーションが大きく変わるはずです。 コーチング・ティーチングのスキルをもっと磨きたいという方に向けて、おすすめ本や資格もご紹介しています。
コーチング・ティーチングを上手く使い分けて、あなたの部下の成長をどんどん加速させましょう!
コーチングとティーチングの違い
それでは早速、みなさんが気になっている「コーチングとティーチングの違い」について簡単にご紹介します。
コーチングはひとことで言うと、「相手から答えを引き出し、相手の自発的行動を促すコミュニケーションスキル」です。一方でティーチングは、「自分の中にある答えを相手に教える(=teach)コミュニケーションスキル」だと言えます。
したがって、コーチングとティーチングの最も注目すべき違いは、「答えを誰が持っているか」という前提です。しかしこれはかなり大雑把な比較なので、次にコーチング・ティーチングそれぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
コーチングの意味
コーチングの意味・定義には様々なものがあります。書籍やスクールで紹介されている意味を3つみてみましょう。
パフォーマンス向上のために、対話によって対象者を勇気づけ、気づきを引き出し、“自発的行動”を促すコミュニケーション・スキル
銀座コーチングスクール
コーチングとは、他者の能力、学習、成長を促進する技術である。
Downey,Myles.(1999) Effective Coaching.
コーチングとは、人々が生活の中で重要な変化を遂げるための強力な関係である。
「コーチング・バイブルー本質的な変化を呼び起こすコミュニケーション 第3版」
これらの定義から、コーチングは他者の“行動”や”気づき”・”変化”・”学習”などを引き出すことができる、双方向のコミュニケーションスキル(関係)であると言えます。言い換えると、相手の中に存在する「答え」を、質問を通して引き出そうとするコミュニケーションということです。
コーチングを受ける側(=クライアント)は、コーチングでの対話で気づきを得て行動を促されることで、自分がやりたいことをやりなりたい自分になることができます。その時にコーチとクライアントとの間で使われるコミュニケーションスキルが、「コーチング」と呼ばれています。
コーチングの意味についてさらに詳しく学びたい方は、「これだけ読めば分かる!コーチングの意味をメリット・種類・スキルから解説」の記事を参考にしてください。
ティーチングの意味
ティーチングとは、「teach(=教える)」という言葉からきており、「自分が持っている知識や技術・答えなどを相手に教えること」です。みなさんが受けてきたほとんどの教育はティーチングを手段にしており、以下は典型的なティーチングの例だと言えます。
- 学校教育で教師が生徒に行う授業
- ビジネス系youtuberの動画
- みなさんが読んでいる本記事
このように、知っている人が知らない人に「答え」を教えるという形で行われるため、ティーチングとは「一方通行」のコミュニケーションになります。
コーチング・ティーチングのメリット・デメリット
コーチングとティーチングの大きな違いが「答えを誰が持っているか」であることがわかりました。それでは、コーチングやティーチングには、それぞれどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
それぞれのメリットやデメリットをきちんと理解しておくことで、職場で効果的にコーチングとティーチングを使い分けやすくなるでしょう。
コーチングの効果・メリット
コーチングの効果・メリットとして挙げられるのは、次のようなものです。
- 部下の自分で考える力を育み、自発性を高める
- 部下の学びを加速させる
- 上司と部下の信頼関係が強化される
- 部下の抱えている悩みに気づくことができる
「部下がもっと自分で考えて動いてくれたら…」と感じる上司の方も少なくないと思いますが、コーチングは部下の自発性や行動を促すために非常に役立ちます。それだけでなく、部下は目標や悩みを上司に引き出してもらうことで、信頼関係が強化されたり部下の精神状態が大きな問題を抱える前に気づくことができるようになります。
コーチングのデメリット
- 時間がかかる
- 大人数の部下を一度に育成することは困難
- 相手が知識や経験不足の時、効率が悪い
コーチングは基本的に1対1の関係で行われるので、大人数の育成を一度に行いたいという時には非効率な手段になってしまう可能性があります。
ティーチングの効果・メリット
ティーチングの効果・メリットは、次の通りです。
- 短時間で多くの情報やスキルを伝えられる
- 大人数の部下を一斉に育成することができる
- 部下間に認識の差がつきにくい
- 部下が知識・経験不足の時、効率よく教えることができる
ご覧の通り、コーチングのデメリットである「時間」「効率」をカバーできるのが、ティーチングのメリットだといえます。
ティーチングのデメリット
ティーチングのデメリットは、次の通りです。
- 部下の自分で考える力を引き出せない
- 部下と上司のコミュニケーションが一方通行になる
- 信頼関係が強化されない
- 部下1人1人の個性を活かすことができない
【場面別】コーチング・ティーチングの使い分け方
コーチング・ティーチングのそれぞれのメリットデメリットを踏まえて、コーチングとティーチングの使い分けのポイントをお伝えすると、以下のようになります。
「相手が答えを持っている場合はコーチングを使い、自分が答えを持っている場合はティーチングを使う」
ただ明日から早速部下育成・教育方法を変えていきたいという方の中には、「じゃあどんな場面でコーチングとティーチングを使えばいいの?」「部下の育成の場面ごとに、もっと具体的に知りたい」と思われる方も多いはず。
そこで次に、職場での部下育成の場面を例に、以下の3つに分けてご説明します。
- コーチングが有効なケース
- ティーチングが有効なケース
- コーチングとティーチングの組み合わせが有効なケース
コーチングが有効なケース
上述の通り、コーチングが有効になるのは、「相手が答えを持っている場合」です。
- 経験を積んでいる部下の、仕事の目標を設定するとき
- 部下の悩み相談に乗るとき
- 部下と共に目標達成の振り返りをするとき
1つ目の「経験を積んでいる部下の、仕事の目標を設定するとき」に関して、例えば難易度の高い提案業務を「経験豊富な」部下に任せる場合を考えてみましょう。
部下は経験上、「提案業務をどういう順番で進めていくか」「何が障害になりそうか」といった答えをおぼろげながらイメージすることができています。したがって「答えは部下の中にある」と言うことができ、この場合コーチングを使うことで、部下自身の考える力を養うことができるでしょう。
2つ目の「部下の悩み相談に乗るとき」になぜコーチングを用いるかと言うと、悩みやその原因・解決策といった答えは部下自身の中にあるからです。みなさんは、誰かの悩みに対してアドバイスをしてものの、相手の悩みが解決しなかったという経験はありませんか?これは、「吐き出したい思い」「悩むことになった細かい経緯」「これからどうしていくか」といった答えは相手自身の中にあり、それに引き出すことができていないからだと言えます。
※ちなみにCOACHING DOJOでは、LINE@登録で”パーソナルコーチング”サービスを初回完全無料でご提供しております。
その他コーチングに関するダイジェストも随時更新しております。
ティーチングが有効なケース
- 新入社員に、業務の初歩的な内容を伝える時
- 部下に未経験の業務を任せる時
- あなたが部下に対して「もっとこうしてほしい」という理想像がイメージできているとき
1つ目の「新入社員に、業務の初歩的な内容を伝える時」に関して、例えば難易度が高い仕事を新入社員に任せる場合を考えてみましょう。部下は当然まだ仕事の進め方がわからないので、「答えはまだ部下の中にない」といえます。したがって、ティーチングを用いて一方通行で指導する方が、時間をかけず効率的に指導できるといえます。
4つ目の「あなたが部下に対して「もっとこうしてほしい」という理想像がイメージできているとき」というのは、例えば「もっとスピーディに業務を終わらせてほしい」といった部下への願望が具体化されているときのことです。「こうしてほしい」という思いは上司のみが知っているものなので、「答えは部下の中にはない」と言えます。「自分はこうしてほしい」とはっきり伝えた上で、「どうすればもっとスピーディに業務がこなせると思う?」といったコーチングを使ったコミュニケーションに切り替えるといった方法も考えられるでしょう。
もし仮に「相手に答えがない」場面でコーチングを使ってしまうと、コーチングは意味のないものになってしまいやすいです。部下は「早く答えを教えてほしい」と悶々と感じたり、上司から誘導尋問をされているような感覚に陥りやすくなります。
育成においてコーチングがティーチングより優れた指導法とされる風潮があるけれど、違うと思っています。コーチングが有効なのはマインド醸成。相手自身が答えを持っているはずなのに、それに到達できる回路が構築されてないとき。答えが潜在していない状態なら、ティーチングで適切な回答を示したい。
— 裏上祐助|編集職 (@yusuke_urakami) October 18, 2020
コーチングとティーチングの組み合わせが有効なケース
コーチングとティーチングの組み合わせが最も有効なケースもあります。例えば、
- コーチング中に、部下がどうしても答えをだせないとき
- 部下が、上司であるあなたの経験談を聞きたいと思っている時
などです。
コーチングは基本的に「答えを教えない」コミュニケーションですが、忘れてはならないのが、コーチングの真の目的は「相手の成長を促進すること」だということです。もし部下が大きな挫折を味わって落ち込んでいるときは「あなたが挫折を乗り越えた経験談」を伝えてもいいでしょう。また、もし部下が「どこから学習を初めて良いかわからない」と感じているなら、上司であるあなたのオススメの本や動画を教えてあげるという手段を取ることも考えられます。
部下へのコーチングを上達させる本3選
どんな場面でコーチングやティーチングを使えばいいか、具体的にイメージできたでしょうか?ここまでご説明してきた通り、部下育成において「コーチング」「ティーチング」はどちらも欠かせないスキルです。あなたの部下育成を加速させるために、まずはどちらのスキルを伸ばしていきたいですか?
「自分はコーチングの方が苦手かもしれない」と感じた方に向けて、部下育成に必要なコーチングスキルを学べる3冊のおすすめ本をご紹介します。
決定版 部下を育てるコーチング
30年以上、人材開発コンサルタントして働いてきた著者が、経験に基づいた具体的スキルを網羅的に説明している本です。
「自発的に仕事に取り組む部下は、どうすれば育成できるのか。」「部下の「やる気」が生まれるために何が必要なのか?」といったお悩みをお持ちの方にぴったりの本です。
新 コーチングが部下を活かす
日本のコーチングの第一人者である鈴木 義幸氏が著し、ロングセラーとなった書籍です。
イラストが豊富で内容も噛み砕かれているため、あらゆるコーチング初学者におすすめできる一冊です。
コーチングを活かしたマネジメントの基本~部下を持つ前に読んでおきたい本~
マネジャー経験とコーチ・研修講師の経験の両方をもつ著者の立場から、実践的な内容をわかりやすく解説している本です。
組織の目標達成を見据えつつも、温かな心をもつ魅力あるマネジャーになりたいという方には最適な一冊です。
部下へのティーチング指導を上達させる本3選
自分の部下育成において、「まずはティーチングから上達させたい」と感じたあなたに向けて、部下育成に役立つティーチングスキルを学べる3冊のおすすめ本をご紹介します。
1.実践!プロの教え方―殴らず、怒鳴らず、人を育てる!|佐藤 英郎
LOUIS VUITTON・電通・キリンビール・ネスレグループをはじめとする250社以上の研修実績をもつ著者が、30の育成手法を伝えてくれる書籍です。
部下との具体的な関わり方だけでなく、「教える側の心構え」についても触れているのが本書の魅力です。
いちばんやさしい教える技術|向後 千春
インストラクショナル・デザイン(教育工学)を専門とする著者の、イラスト豊富な親しみやすい本です。
具体例も豊富で文章も平易なので、ティーチングを学ぶのが初めてと言う方に特におすすめの書籍です。
行動科学を使ってできる人が育つ!教える技術|石田 淳
日本の行動科学マネジメントの第一人者である石田 淳氏の著書です。
新人・中途社員・大人数など、様々な場面で使える55のメソッドが解説されています。どこから読んでも役立つ情報が得られるため、即効性の高い本をお探しの方におすすめです。
コーチングの学び方についてさらに詳しく学びたい方は、「コーチングを学ぶ定番の方法3選!本・講座・目的・つまずくポイントを解説」の記事を参考にしてください。
コーチングのやり方をより深く学べる2つのコーチング資格
コーチングを学ぶには、ご紹介したような本を読んで勉強する方法以外にも、「資格取得」を目指して勉強するという方法もあります。
様々な民間団体が資格を発行しているため、選ぶのに困ってしまう方もいるかもしれません。そこで最後に、資格取得を目指す方におすすめのコーチング資格をご紹介します。
国際コーチ連盟(ICF)認定コーチ資格
ICF認定コーチ資格は、時間をかけても世界的に権威ある資格を取りたい方におすすめです。
世界最大の非営利団体である国際コーチ連盟(ICF)から認定を受けている、世界的に権威のあるコーチングの資格です。日本では、ICF ジャパンという一般社団法人によって運営され提供されている資格です。ICF認定のコーチング資格には、以下の3つがあります。
- アソシエート認定コーチ(ACC)
- プロフェッショナル認定コーチ(PCC)
- マスター認定コーチ(MCC)
アソシエート認定コーチは求められるコーチング経験が少なく、上から順に求められる要件が厳しくなります。具体的には、アソシエート認定コーチは「100時間のコーチング実績」が受験条件であるのに対し、プロフェッショナル認定コーチは「500時間のコーチング実績」、マスター認定コーチは「2500時間のコーチング実績」が受験条件になっています。
アソシエート認定コーチ(ACC)の資格取得を申請するためには、「100時間のコーチング実績」に加え、ACTPと呼ばれるコーチ育成プログラムを受講する必要があります。ACTP(Accredited Coach Training Program)は、ICFによって認定されたコーチングスクール・団体によって提供されています。したがって、一般的な流れは、
コーチングスクールで基礎を学ぶ → ACTP受講完了 → アソシエート認定コーチ(ACC)申請
のようになります。
こちらにACTPを提供しているコーチング団体のリストがあるので、行く行くはICF認定のコーチング資格を取りたいという方はぜひご覧ください。
一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチ資格
コーチング初心者に特におすすめな資格が、一般財団法人生涯学習開発財団の認定資格です。
(一財)生涯学習開発財団認定コーチ資格は、コーチングを活かし、仕事やマネジメントの中で部下や相手の主体性を引き出しながら、目標達成や成長を促すことのできることを証明する「コーチング型マネージャー」のための資格です。マネージャーとして、自身のキャリアップ、組織内外の人とのコミュニケーションに活かすなど、活用の場面は多岐に渡ります。
coachAcademia より引用
こちらの資格は1998年に始まった日本初の「コーチ認定制度」であり、7,400人以上が資格取得しています。ICFとは異なり日本国内でのみ通用するものであり、日本国内で最も多くの人に取得されているコーチング資格と言われています。
一般財団法人生涯学習開発財団が認定しているコーチング資格には、以下の3つがあります。
- 生涯学習開発財団認定コーチ (初級者向け)
- 生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ(中級者向け)
- 生涯学習開発財団認定マスターコーチ (上級者向け)
初心者向けである生涯学習開発財団認定コーチを取得するためには、「コーチ・エィ アカデミア」が提供するクラスを履修した上で、コーチングを受けた経験や5名以上へのコーチング実践経験などが必要となります。
まとめ:コーチング・ティーチングを上手く使い分けて部下を育成しよう
いかがだったでしょうか。
「コーチング」「ティーチング」それぞれにメリット・適した場面があり、部下育成においては目的に合わせて2つを使い分けることが非常に重要です。「この場合、答えが自分と部下どちらにあるのか?」という問いを常に考えることで、コーティングとティーチングの使い分けに悩んだときに選びやすくなるはずです。
コーチング・ティーチングそれぞれのスキルを磨き、部下の成長を加速させられる上司になりましょう!
※ちなみにCOACHING DOJOでは、LINE@登録で”パーソナルコーチング”サービスを初回完全無料でご提供しております。
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