COACHING DOJO編集部
2021.03.31 / 23 min read
この記事の監修者
濱崎 翔吾(銀座コーチングスクール認定コーチ)
東京大学経済学部経営学科。心理学や心理療法、チームビルディングなどについて学ぶ。スタートアップ数社でのインターン経験、Youtubeでの情報発信経験を経て、ステラー株式会社にジョイン。現在はコーチングを通して多くのクライアントの目標達成を支援している。
コーチングの真価をわかりやすく伝え、みなさんのコーチングとの”出会いの場”を創出いたします。
リーダーやマネージャーに不可欠な力として注目を浴びている「自己認識力」。
「自己認識力とは一体なんなのだろう?」「結局何にとりくめばいいのだろう?」「自己認識力を高め、優秀なリーダーへと成長したい」と思われる方も少なくないのでは。
そこで今回は、自己認識力の意味や高める具体的な方法を、豊富な科学的な根拠とともにご紹介します。ニューヨーク・タイムズでベストセラーとなった書籍「insight」を参考に、自己認識を深められる質問リストをご紹介するので、リーダーとして自己認識力を高めるための具体的なアクションが明確になるでしょう。
自己認識力を高め、優秀なリーダーへと成長しましょう!
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コーチングの意味についてさらに詳しく学びたい方は、「これだけ読めば分かる!コーチングの意味をメリット・種類・スキルから解説」の記事を参考にしてください。
自己認識力とは
自己認識力は「自分のことを分析し、理解する力」です。
「自己認識」という言葉の定義は長年様々であり、自己認識力の包括的な定義が必要となりました。そこで、自己認識を次の2つのカテゴリーで捉える考え方が作り出されました。
それぞれについて細かく見てみましょう。
内面的自己認識
「内面的自己認識」は、自分の内面の部分についていかに明確に捉え、理解できているかということです。自分自身を認識することと言ってもいいでしょう。
内面の部分というと少し曖昧なので、組織心理学者のターシャ・ユーリック氏が紹介している内面の具体例を以下に示します。
- 自分の価値観
- 情熱
- 願望
- 環境への適合
- 反応(思考、感情、態度、強み、弱みなど)
- 他者への影響力
わかりやすくいえば、以下のような問いに対して、どの程度はっきりとした答えを出せるのか、が内面的自己認識だといえるでしょう。
- 「自分は人生で何を大事にしたいのか?」
- 「自分は何に対して特に情熱を感じるのか?」
- 「自分はどういう時に怒りをおぼえるのか?」
- 「何を傷つけられるといやなのか?」
- 「何が強みなのか?」
- 「自分の言動は周りにどんな影響を与えているのか?」
外面的自己認識
「外面的自己認識」とは、先ほどあげたような自分の内面的な部分を、他者がどうみているかを認識することです。
もしあなたの外面的自己認識が「自分は部下に好かれているだろう」であり、部下が「上司のことを尊敬している」と思っているなら、それは外面的自己認識力が高いといえます。一方で部下は心の奥では「上司のことが苦手」と思っているのなら、それは外面的自己認識力が低いといえます。
このように、自分のことを周りがどのように認識しているかを正確に掴むことが、「外面的自己認識」なのです。
自己認識力とエモーショナルインテリジェンス
リーダーが備えるべき能力の1つとして注目されている概念の一つで、「エモーショナルインテリジェンス」という言葉を聴いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
エモーショナルインテリジェンスの文脈でも「自己認識力」が登場したりと、何かとややこしいと感じることもあるかもしれません。
そこで、自己認識力とエモーショナルインテリジェンスの関係性を明確に理解できるよう、ご説明いたします。
エモーショナルインテリジェンスとは
エモーショナルインテリジェンスとは、「感情的知性」「こころの知能」と和訳されます。「感情をうまく取り扱う力」といってもいいでしょう。
自他の感情を把握したり、感情に基づいて最適な行動を選んだりする力であるエモーショナルインテリジェンスは、エリートやエグゼクティブに注目されています。
人間関係を円滑に進めることができたり、ビジネスや人生のあらゆる面での成功に関係していると言われています。
自己認識力とエモーショナルインテリジェンスの関係
心理学者のダニエル・ゴールマンによると、エモーショナルインテリジェンスは以下の4つの要素に別れているといいます。
- セルフ・アウェアネス(自己認識)
- セルフマネジメント(自己管理)
- ソーシャル・アウェアネス(社会的認識)
- 人間関係管理
ご覧の通り、エモーショナルインテリジェンスの1要素としてセルフ・アウェアネス、すなわち自己認識力が含まれているのです。
ここで注意していただきたいのが、エモーショナルインテリジェンスの要素の1つである「自己認識力」は、より「内面的自己認識力」の意味合いが強いということです。エモーショナルインテリジェンスの1つである「自己認識力」は、自分の感情や、その感情がわく理由を理解できている力です。すなわち、他人が自分の感情をどうみているか、といった「外面的認識力」の意味合いはあまり含まれていないといえます。
まとめると、自己認識力のうち「内面的自己認識」を高めることで、「感情をうまく取り扱う力」であるエモーショナルインテリジェンスも高めることができるという関係です。
EI(エモーショナルインテリジェンス)を上げるためには、自己認知力を上げる必要がある。
自己認知には、内的自己認知と外的自己認知がある。
— おがわーる@Hakali (@ogawa_hakali) August 8, 2020
自己認識力が低い人の特徴
みなさんは、自分の自己認識力の高さはどうだと思われますか?
おそらく、「自分のことはある程度しっかり認識できている」と思われる方も多いのではないでしょうか。
組織心理学者のターシャ・ユーリック氏の調査によると、自分は自己認識ができていると考えているビジネスパーソンは95%にものぼるそうです。しかし意外なことに、正しく自己認識力ができている人は10%~15%しかいないそうです。
そこで、自己認識力が低い人の特徴を以下の3つのパターンで理解して、自分の自己認識力を改めて見つめ直す機会にしてみてはいかがでしょうか。
- 内面的自己認識力:高い 外面的自己認識力:低い
- 内面的自己認識力:低い 外面的自己認識力:高い
- 内面的自己認識力:低い 外面的自己認識力:低い
1. 内面的自己認識力:高い 外面的自己認識力:低い
外面的自己認識力のみが低い人は、「内省者」と呼ばれ、自分の内面をよく理解しています。
一方で、他者の意見やフィードバックを積極的に取り入れることをしようとしないため、自分以外の人の考え方や感じ方に鈍感になり、気づきにくいといえるでしょう。
これにより、悪気はなくとも他者の気持ちを尊重できない言動をとってしまったり、評価者の視点がわからず間違った方向へ努力してしまったりといったケースが考えられます。
2. 内面的自己認識力:低い 外面的自己認識力:高い
内面的自己認識力のみが低い人は、「八方美人」と呼ばれ、他者に喜ばれることのみを尊重し自分にとって重要なことを見逃してしまう可能性が高いです。
例えば「自分の本当にやりたいこと」が不明確なまま、周りの人に求められるままにキャリアを選んでしまい、充実感を感じられないというケースが考えられるでしょう。
一方で、他者からの視点は十分に認識できるため、周囲の人とのトラブルは少ないでしょう。
3. 内面的自己認識力:低い 外面的自己認識力:低い
内面的自己認識力も外面的自己認識力も低い人は、「探索者」と呼ばれ、自分のことも他者からみた自分もわかっていません。
自分が思っているようなパフォーマンスが出せないことや、人間関係でのトラブルで悩むことが多いかもしれません。
このように、内面的自己認識力と外面的自己認識力は、どちらが低くても問題が生じます。内省を深めながらも、他者からの視点も積極的に取り入れることで、両方をバランスよく維持することが重要だとされています。
リーダーに自己認識力が必要な理由
内面的自己認識力と外面的自己認識力の両面からなる自己認識力ですが、なぜ「リーダー」や「マネージャー」にとって必要な要素だとされているのでしょうか?
多く分けて、以下の2つの理由が考えられます。
- 自己認識力がパフォーマンスを向上させるから
- 権力が高まると、自己認識力が下がりやすくなるから
自己認識力がパフォーマンスを向上させるから
まず1つ目の「自己認識力がパフォーマンスを向上させるから」について解説します。
自己認識力が高いことがビジネス上で成果をあげることは、科学的なエビデンスとともに明らかになっているそうです。Harvard Business Reviewのこちらの記事では、自己認識力が高いメリットが以下のように紹介されています。
研究が示すところによれば、自分について明確に認識している人は、より自信があり、より創造的である。より適切な判断を下し、より強い人間関係を築き、コミュニケーション能力も高い。嘘をついたり、騙したり、盗んだりする可能性が低い。仕事のパフォーマンスが優れ、昇進しやすい。そして、より有能なリーダーであり、その部下の満足度は高く、会社の収益向上にも貢献している。
ハーバード・ビジネス・レビュー より引用
この中でも特に、
- 適切な判断を下す
- コミュニケーション能力が高い
- 有能なリーダーである
- 部下の満足度が高い
といった特徴は、まさしくリーダーにとって不可欠な要素であるといえます。
権力が高まると、自己認識力が下がりやすくなるから
2つ目の「権力が高まると、自己認識力が下がりやすくなるから」について解説します。
経営学教授のジェームズ・オトゥールによると、人は自分の権力が大きくなるにつれて、周りの意見に対する聞く耳を持たなくなっていくそうです。最初は上司や同僚の意見や視点を理解しようとしていた人でも、昇進していくにつれてその傾向がなくなっていきます。理由として、部下よりも多くのことを知っているはずの自分が意見を求めることは、権力が減少すると認識してしまうことがあげられるそうです。
また、権力が高まると、自己認識力が下がりやすい方向に環境が変わっていくともいえます。極端な話をすれば、社長に率直な意見やアドバイスを与えられる人間は非常に少ない一方で、新卒社員に意見やアドバイスを言える人は多くいるはずです。まわりからのフィードバックが減るという環境の変化の面からも、リーダーが自己認識力を意識しておくことは重要だといえます。
自己認識力を高める方法
それでは、自己認識力を高める4つの方法をご紹介します。
- 「なぜ」ではなく「何」で内省する
- 他者からのフィードバックを受ける
- ジャーナリング
- マインドフルネス瞑想
「なぜ」ではなく「何」で内省する
自己認識力を高める1つ目の方法が、「なぜ」ではなく「何」で内省するということです。この方法は、「内面的自己認識力」を高めるために役立ちます。
少し漠然とした曖昧な方法に思える方もいらっしゃるかもしれませんが、自己認識力のみならず、メンタルヘルスや目標達成など多くの場面で活用できる効果的な方法です。
みなさんも自分の行動や感情の理由を考えるときは、「なぜ〜したんだろう?」とかんがえるのではないのでしょうか。しかし、「なぜ」から始まる問いかけで内省することは、意外なことに効果がないそうです。
研究によれば、人は自分の無意識の思考、感情、動機を探ろうとしても、その大部分をそもそも知ることができない。そして、意識上で認識できないものが非常に多いため、人は「真実だと感じられる答え」をつくり出すことがよくあるが、それは往々にして間違っているのだ。
ハーバード・ビジネス・レビュー より引用
一方で、「何」で内省することは、より客観的に考えることを可能にします。
例えば、睡眠不足気味のある男性が、仕事で疲れて家に帰り、ささいなことをきっかけに妻と口論に発展した場面を考えてみましょう。
「なぜ」をつかって内省すると、
- 「なぜムキになっちゃったんだろう?」
- 「なぜ妻と喧嘩してしまったんだろう?」
といった問いかけが生まれます。しかしここから生まれてくる答えは、例えば
- 「自分は器が小さい男なのかもしれない」
- 「妻との相性があまり良くないのかもしれない」
といったネガティブなものかもしれません。この場合、トラブルの原因は「自分」「妻」「自分と妻の相性」のように「人」に帰着してしまいました。
一方で、「何」をつかって内省するとどうなるでしょうか。
- 「自分をムキにさせる状況は何だろう?」
- 「何を改善すれば繰り返さずにすむだろう?」
ここから生まれてくる答えは、例えば
「仕事で疲れて帰る、という状況がトラブルを起こしやすくしている」
「睡眠不足を改善することで、仕事が終わった後ももう少し機嫌よくいられるのではないか」
といった建設的で客観的なものになるでしょう。原因は「状況」であり、それを避けるための改善策にも繋がります。
このように、「なぜ」ではなく「何」で内省することを心がけることで、より効果的に「内面的自己認識力」を高めることが可能になります。
他者からのフィードバックを受ける
自己認識力を高める2つ目の方法が、「他者からのフィードバックを受ける」というものです。この方法は、「外面的自己認識力」を高めるために役立ちます。
上述のとおり、リーダーには他者の意見を積極的に取り入れることが必要です。そうでなければ、自然と他者の視点を取り入れる機会は減少し、あなた自身の外面的認識力も低下してしまうからです。
他者の意見を手っ取り早く取り入れる方法は、「他者からのフィードバックを受ける」ことです。このとき、なるべく率直な厳しいフィードバックをもらえるよう工夫する必要があります。そのためにも、普段から高圧的に相手の発言を否定しない姿勢や、傾聴力を高めることは役にたつでしょう。
また、コーチを雇ったりメンターについてもらうことも、他者からのフィードバックを受ける効果的な方法です。
コーチングには「私には、あなたが〜と感じているように見える」という伝え方がありますが、これもコーチングのクライアントに外面的認識を促すテクニックといえます。メンターも、会社内でのあなたとの立場に関係なく忌憚のない意見をくれる可能性が高いため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
ジャーナリング
自己認識力を高める3つ目の方法は、「ジャーナリング」です。この方法は、「内面的自己認識力」を高めるために役立ちます。
ジャーナリングは、「書く瞑想」とも呼ばれており、Googleの「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」という、マインドフルネスの実践プログラムの一つです。
以下に、ジャーナリングの進め方の一例をご紹介します。
- 紙とペンを用意する
- 時間を決める
- 深呼吸する
- 頭に浮かんだことをひたすら書き続ける
頭に浮かんだことを紙に書いて見ることで、自分の思考を客観的に認識することができます。コツは、頭に浮かんだことをなるべく考えずに書き出すことです。「これは書かないでおこう」といった無意識の思考の制約を外して本当の気持ちを理解することこそが、ジャーナリングの目的だからです。
また、テーマを決めて書くのもおすすめです。先ほど内面的認識力の具体例でご紹介した、以下の要素からテーマを1つ決めてジャーナリングしてみるのも良いでしょう。
- 自分の価値観
- 情熱
- 願望
- 環境への適合
- 反応(思考、感情、態度、強み、弱みなど)
- 他者への影響力
マインドフルネス瞑想
自己認識力を高める4つ目の方法が、「マインドフルネス瞑想」です。この方法は、「内面的自己認識力」を高めるのに役立つでしょう。
「内面的自己認識力」が低い人にとっては特に、自分の内面で起こっている現象をあるがままに気づき、捉えることは大変難しいです。例えば「自分のやりたいこと」がわからない人にも、普段の生活に「自分の心がワクワクした小さな出来事」は多く起こっているはずです。しかしスマートフォンをはじめとする外部の刺激や、過去・未来のことを考えることで、心はそうした機会に気づかずさまよってしまうのです。
マインドフルネス瞑想は、「今、瞬間の気持ち」「今ある身体状況」」を把握する力を養うために行う瞑想法です。生活の些細な自分の状態に気づくことができれば、そこから「何」の問いかけをして内省を深めることも可能です。
マインドフルネス瞑想のやり方はシンプルで、姿勢を正し、自分の呼吸に意識を向け続けるだけです。余計な思考が浮かんできたら、そのことに気づき、優しく手放してあげましょう。それを繰り返すことで、徐々に自分の状態にきづく力が高まっていきます。
マインドフルネスの詳しい実践方法を学びたいという方は、こちらの記事を参考に読んでみてください。
マインドフルネスは国際的にも推奨されている心の整え方なのです✨☆ 2013年のダボス会議で、優れたリーダーに必要な 「自己認識力 」 「自己管理力 」の開発法としてマインドフルネスを採用。
☆最近ではコロナ禍のリモートワークでの不安対処法として、国連が職員向けにマインドフルネスを推奨。
— あやぱん🧘♀️Mindful.jp編集長 (@Ayapann88) July 25, 2020
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自己認識力について詳しく学べる書籍
それでは最後に、自己認識力についてより詳しく学びたいという方にむけて、おすすめの書籍を2冊ご紹介します。
『insight(インサイト) いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』
こちらは本記事でもご紹介した組織心理学者のターシャ・ユーリック氏の著書です。
膨大な先行研究とターシャ・ユーリック氏自身の研究・実践に基づき、より深く自分を知り、その気づきを行動に変える方法が紹介されています。
ストーリーが多く読むのに少し忍耐力を必要としますが、「自己認識力」の入門書としておすすめです。
セルフ・アウェアネス (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ])
こちらはハーバード・ビジネス・レビューから出版された、章ごとに違った著者によって書かれた書籍です。
クオリティが高い論文が集められている上に、引用元文献などエビデンスにアクセスできる情報もしっかりと掲載されています。一次情報から確かな情報を学びたい方におすすめです。
まとめ:自己認識力を高め、優秀なリーダーへと成長しよう
いかがだったでしょうか。
自己認識力は「内面的自己認識力」と「外面的自己認識力」の2つにカテゴリー分けすることができ、どちらもバランスよく持っていることが重要であるとご説明しました。
「何」を用いた問いかけ・ジャーナリング・他者からのフィードバックを活用して、自己認識力の高い優秀なリーダーへと成長しましょう!
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