COACHING DOJO編集部
2021.04.16 / 17 min read
この記事の監修者
濱崎 翔吾(銀座コーチングスクール認定コーチ)
東京大学経済学部経営学科。心理学や心理療法、チームビルディングなどについて学ぶ。スタートアップ数社でのインターン経験、Youtubeでの情報発信経験を経て、ステラー株式会社にジョイン。現在はコーチングを通して多くのクライアントの目標達成を支援している。
コーチングの真価をわかりやすく伝え、みなさんのコーチングとの”出会いの場”を創出いたします。
コーチングにおいて非常に重要な「オートクライン」。
「もっと部下に主体的に動いて欲しい」「具体的にどんなスキルを使えばオートクラインを引き出せるのか知りたい」と思われる方も多いのでは。
部下の気づきを引き出し、モチベーションをアップさせられる上司になれるかどうかは、いかに「オートクライン」を意識して引き出せるかにかかっています。
そこで今回は、オートクラインの意味と、部下のオートクラインを引き出すための3つのコーチングスキルをご紹介します。認定コーチ監修のもと、オートクラインを引き出す実践的な質問例や注意点をご紹介するので、明日からの部下とのコミュニケーションが早速一味変わってくるかもしれません。
オートクラインを意図的に引き出し、主体的な部下を育てましょう!
コーチングの意味について詳しく学びたい方は、「これだけ読めば分かる!コーチングの意味をメリット・種類・スキルから解説」の記事を参考にしてください。
オートクラインの意味
まずは、言葉の意味からみていきます。
オートクラインは、コーチング用語です。元々は医学療法的な意味で解釈されており、「自己分泌」という解釈をされていました。
コーチングの観点では、「自分が発言した内容を自分の耳で聞くことで、今までに自分が気づかなかった自分の考えに気づけるようになる」という意味で活用されています。
上司や同僚に悩みをぶつけたり、話をしている間に、解決方法が出てきた経験はありませんか?
実はその状態がオートクラインになります。
オートクラインと似た言葉として、パラクライン、エンドクラインがあります。オークトラインもこれらの2つも、元々医学用語なので少しわかりにくいです。
コーチング的な観点で解説をすると、パラクラインは、発信された情報を受け取る工程を意味するので、伝達行為を指しています。エンドクラインとは、情報を受領する側を意味しているので、コーチングを受ける人を指しています。
これらのオークトラインに関する前提知識を知った上で、オークトラインが及ぼすメリットについても見ていきましょう。
オートクラインで気づきを得るメリット
納得感が高い
自分で発した言葉を自分で理解するのがオートクラインなので、決めたことへの納得感が高くなります。
他人にアドバイスをされたり、提言された言葉や話の内容より、自らの言葉の方が納得感が生まれるのは当然ですよね。
「そうか、自分はこの目標を達成したかったのか!」と自分で納得感を持つのと、
「君は、この目標を達成しなければならない!」と他人に言われるのでは、納得感が全然違いますよね。
その様に、オートクラインは自分への説得力も上がるので、納得感が増すようになります。
行動へのモチベーションが高まる
他人から何かを示唆されることなく、自分が発した言葉で、今まで気づけなかった事に気づけるようになるので、行動へのモチベーションが上がりやすくなります。
他人からのアドバイスや提言などは、納得感が完全にないと行動に移せない人が多いです。特に上司から部下へのアドバイスなどでは、納得感がなければ部下はなかなか動きません。
部下が自ら行動を起こすためにも、オートクラインによる気づきは重要になります。
なので、オートクラインを妨げるような発言や行動を、上司は決して行ってはなりません。具体的なNGな上司の行動例を解説していきましょう。
部下のオートクラインを妨げる上司のNG行動
部下のオートクラインを妨げる上司のNG行動例を2つ紹介していきます。細かなNG例は山ほど存在しますが、ここでは代表的な例として2つを紹介していきます。
上司ばかりが話す
上司ばかりが話してると、部下が話しにくくなり、部下自ら話す回数が減ってしまいます。そうなると、オートクラインを部下が感じる機会は減少してしまいます。
話すのではなく、上司はできるだけ聞く事に意識を向け、上司が話す割合と部下が話す割合比率を、2対8くらいにしておきましょう。
アドバイスする
部下が話をしている時に、上司がアドバイスを行ってしまうと、部下が委縮をして話しをしなくなる可能性が高いです。アドバイスをすることは悪い事ではありませんが、アドバイスするべき内容を部下が自ら気づけるように、誘導してあげることが上司の役割になります。
そうすることで、部下が話をしやすくなり、オートクラインを実践しやすくなります。
以上が、部下に対して上司がやってはいけないNGな行動例でした。とは言え、実際に部下がオートクラインを自発的に活用するために、上司はどのような関わり方をしたらよいのでしょうか。
次章では、オートクラインを引き出すための3つのコーチングスキルについて解説していきます。
オートクラインを引き出す3つのコーチングスキル
聴くスキル
まずは、「聴く」スキルが重要です。先ほどもご説明しましたが、上司が喋る割合を少なくして、部下に話をさせる割合を多くすることが、オートクラインを引き出すコツになります。
なので話を聴くスキルがないと、部下が内面的に感じている事を引き出すのが難しくなります。
オートクラインでは、部下も今までに気づけなかった事を、自分で話しながら気づく行為になるので、話の深度を深めていく事が非常に重要になります。
一見、話を聴くスキルは簡単そうに見えますが、傾聴することはそう容易ではありません。部下が自分が興味のない分野や内容の話をしていても、興味がない事を示さずに話を引き出す必要があります。
聴くスキルの中には、以下のような要素が含まれています。
・ミラーリング
・要約してまとめる
・分かり易く例える
・相手の話すことがなくなるまで黙る
・「それでどうなった?」「その時にどのように感じた?」などの言葉をかける
・適切なタイミングで相槌を行う
質問するスキル
質問するスキルの役割は、相手が内面的に思っている思考や価値観を引き出すことです。つまり、相手の中にある答えを引き出すことになります。
部下が内面に秘めている思考や価値観を引き出すためには、様々な角度やモノサシで質問することが大切です。
質問する具体的なやり方としては、以下の3つがあるでしょう。
・クローズドクエスチョン
・オープンクエスチョン
・5W1Hを意識した質問
クローズドエスチョンは、「Yes」か「No」で回答できない質問になります。例えば、「あなたにはやりたいことがありますか?」に対する答えとしては、「ある」か「ない」になります。
対して、オープンクエスチョンは、「Yes」か「No」で回答できない質問になります。例としては、「あなたのやりたいことは、どのようなものですか?」に対する回答は三者三様で、どのように回答するかはひとそれぞれです。
クローズドクエスチョンは一問一答形式なので、テーマが断絶して話の深堀りを行うことが難しく、部下に話をする際は、オープンクエスチョンの比率を高めて行くことが重要になります。
また、「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」という5W1Hの観点で聴く事で、話の内容に漏れがなく深ぼりをする事が可能です。
認めるスキル
認めるスキルの役割は、「相手に安心感を与える」事です。なので、話の途中に否定をしたり、各論的な意見をしたり、あなたの主張で部下の話をさえぎってはいけません。また、どれだけ正当な意見だとしても、「正しい」「いいね」などの「判断」を行ってはいけません。
悪い判断でも良い判断でも、判断によるバイアスが発生してしまい、悪いことを言ってはいけない、良いことを言わなければいけないといバイアスが発生して、内面的に感じている本音を引き出すことが難しくなります。
基本的には、部下が話をしている「事実」のみだけ受け入れるようにして、部下の話を100%受け取る事で、部下を認める事が重要になります。
部下から話を引き出す具体的に必要なスキルについて紹介してきましたが、次章では、オートクラインを引き出すための質問例を紹介していきます。
オートクラインを引き出す質問例
オートクラインを引き出す質問例を主に4種類ご紹介していきます。これらの質問例はコーチとしては当たり前に実践できる質問例になります。その中でも、比較的、上司と部下の関係性を構築するきっかけになりうる質問例を紹介していきます。
ゴールを明確にする質問
ゴールを明確にする質問例として、以下の内容があります。
・どのような状態になっていたいですか?
・その状態になりたい理由などはありますか?
・それはいつまでになっていたいですか?
・その状態を達成している自分を想像できますか?
・その状態になることで、何を得たいですか?
・その状態を数字で表現することはできますか?
・そのゴールはあなたにとってどのくらい重要ですか?
・どうしてそれほど重要ですか?
・他に重要な事はありますか?
・どちらの方が緊急性が高いですか?
できるだけ、わかりやすい状態まで言語化したり数値化をすることで、ゴールの解像度が高くなります。
多くの人は、「〜をしないようにする」という目標を立てる傾向にあります。例えば、「上司への報告がおくれないようにする」「納期に遅れないようにする」などです。
しかし、コーチングで目標やゴールを引き出す際に重要な事は、本人が本当にやりたいことを引き出してあげることです。そして、してはいけない目標ではなく、やりたいことを達成するためのゴールを引き出すことが非常に重要です。
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現状に気づかせる質問
ゴールを明確にしたら、次は現状を本人に自覚させる必要があります。現状を気づかせるための質問例として次のような内容になります。
・目標地点の点数を100点とすると、現状のあなたは今何点ですか?
・その点数の理由や背景は何がありますか?
・今の心理的な状態は目標の時にイメージしている状態と比べてどうですか?
・ゴールを達成するための今の行動はどのような行動ですか?
・その行動に対する熱量や本気度は100%の状態ですか?
・現状のあなたに満足していますか?
現状を気づかせるのは、目標に対して今の自分がどのくらいの差があるのかを認知させるためです。ですので、本人が感じている事実ベースの内容をしっかり引き出すようにしましょう。
必要な行動に気づかせる質問
目標と現状が明確になったとは、目標の状態と現状の状態を比較したときに、不足していることが何かを本人自ら気づかせることが重要です。
ここでは、コーチが本人にアドバイスしたり答えを用意してはいけません。
目標に対して足りていないと感じている部分が、今後必要な行動に直接紐づいています。質問例としては以下のような内容になります。
・目標達成するために必要な事はどんなことがありますか?
・それを具体的に行動に落とし込むとどのような内容になりますか?
・それ以外の方法は他になさそうですか?
・どの行動が目標に最も、目標に与えるインパクトとして大きいですか?
・いつからその行動を始めますか?
・いつまでにその行動をおわらせますか?
・外部の人を巻きこむ必要はありますか?
・その行動を起こすために障壁になっていることがありますか?
別の視点に気づかせる質問
目標を達成するための行動を具体化することが出来たと思っても、できていないケースは多いです。なので、視点を変えたり捉え方を変えた質問を行う事で、より精度高く具体化することができます。
以下のような内容になります。
・制約やルールがなかったらどのような選択肢をとりますか?
・第三者から見て、今のあなたはどのように見えていますか?
・その行動の結果、第三者の人はどのように感じますか?
・今までの失敗体験や成功体験から、活かせることはありますか?
・上司の〇〇さんなら、どのような行動をおこしますか?
・自分が尊敬している▼▼さんなら、どのような行動を起こしますか?
・今までにやってきたことがなかった選択肢はありますか?
本人が今まで気づかなかったような回答を引き出すことが目的になるので、意外性の高い質問をしてあげることが重要になります。
以上、4つの観点での質問例でした。最後に次の章では、オートクラインを引き出す際の注意点を解説していきます。
オートクラインを引き出すうえで、説明する注意点を外してしまうと、オートクラインを引き出せる可能性が日所に低くなるので、しっかりと予習したうえで、先ほどの質問を行っていきましょう。
オートクラインを引き出す上での注意点
オートクラインを引き出すうえで重要なことは大きく3つです。
誘導尋問にならないようにする
コーチングは相手の潜在的な部分を引き出しますが、誘導的に質問をしてはいけません。
答えを引き出すための質問をついつい並べてしまいますが、「言わされてしまった」と思わせては、コーチングの狙いである自発的な行動や発言を促すことができません。
その発言の意図や背景を汲み取る事だけに集中をしましょう。例えば時間を意識してしまうと、時間内で答えを引き出そうとするための言動をする可能性が高いので、できるだけ時間を気にせずに、コーチングを行いましょう。
詰問にならないようにする
発言の意図や背景を引き出すために質問をしていると、「なぜ?」「どうして?」「理由は?」など、少し高圧的に聞こえてしまうので、これらの言葉を直接的に使うことはできるだけ避ける必要があります。
そのためには、まず相手の話に同調や復唱をすることで相手の存在を認めた上で、その理由や背景を聞くのが良いでしょう。
同調や復唱には相手の存在を認める効果が大きく、認めることで相手は心を開かせてオープンマインドになってくれます。
相手が答えを持っていない時は、答えを教える
相手が答えをもっていない、回答に詰まってしまう状況においては、「答え」を教えてあげることも一つのテクニックです。
これはコーチングよりもティーチングに近いですが、答えを教えることで、効率よく次の行動に移ったり次に必要な事を考えられるようになります。
また、ティーチングを行うことで得られるメリットとして、以下のような内容があります。
・短時間で多くの情報やスキルを伝えられる
・大人数の部下を一斉に育成することができる
・部下間に認識の差がつきにくいた
以上3つが主な注意事項になります。
まとめ:オートクラインを意図的に引き出し、主体的な部下を育てよう
いかがでしたでしょうか。今回は、オークトラインを実現させる具体的な質問例から、コーチングを行う上で必要なスキルについて、「聴く」「質問する」「認める」スキルを紹介しました。
部下の内面的な部分を引き出すことは簡単ではなく、今回記載した内容もいざ、実践してみると意外に難しいでしょう。
しかし、部下やメンバーが主体的で組織として強い会社の管理職は、これらの事を当たり前の様に行っています。
オークトラインやコーチングノウハウを活用して、強いスキルを構築していきましょう!
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