2021.05.01
COACHING DOJO編集部
2021.05.01 / 16 min read
この記事の監修者
濱崎 翔吾(銀座コーチングスクール認定コーチ)
東京大学経済学部経営学科。心理学や心理療法、チームビルディングなどについて学ぶ。スタートアップ数社でのインターン経験、Youtubeでの情報発信経験を経て、ステラー株式会社にジョイン。現在はコーチングを通して多くのクライアントの目標達成を支援している。
コーチングの真価をわかりやすく伝え、みなさんのコーチングとの”出会いの場”を創出いたします。
みなさんには、「なんかムカつく」「気に入らない」部下はいますか?
上司として「嫌い」という感情に流されずにマネジメントしたいけれど、どうしても嫌いな部下に心を掻き乱されてしまうこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、部下が嫌いになってしまう原因と、嫌いな部下に上手に対処する6つの方法をご紹介します。コミュニケーションや感情マネジメントの専門家である筆者の経験を交え、「アサーティブコミュニケーション」や「コーチング」やおすすめ書籍など、今のあなたに必要な情報をご紹介します。「部下が嫌い」という気持ちが整理でき、優れた上司になるために今後どう付き合っていけばいいかがわかるはずです。
嫌いな部下との付き合い方を変えて、リーダーとしてさらに成長しましょう!
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コーチングの意味についてさらに詳しく学びたい方は、「これだけ読めば分かる!コーチングの意味をメリット・種類・スキルから解説」の記事を参考にしてください。
「嫌いな部下がいること」を責めなくても良い3つの理由
Career or business vision concept with a man flying in a hot air ballon and searching for new goals, perspective and opportunities. Vector illustration.
部下のことを嫌いになってしまう原因をご紹介する前に、みなさんにお伝えしたいことがあります。
それは、「嫌いな部下がいること」を「リーダー失格だ」「自分は器が小さい」といったように責める必要は全くないということです。
それでは次に、「嫌いな部下がいること」を責めなくても良い以下の3つの理由について詳しくご説明します。
- 無理に部下を好きになる必要はないから
- 脳が勝手に「好き嫌い」を決めているから
- 「嫌い」という感情は抑えつけない方が良いから
無理に部下を好きになる必要がそもそもないから
「嫌いな部下がいること」を責めなくても良い理由の1つは、「無理に部下を好きになる必要がそもそもない」からです。
精神科医の樺沢紫苑氏は著書『ストレスフリー超大全』の中で、以下のように述べています。
「職場での人間関係」に関するある調査では、84%もの人が問題を抱えているというデータがあります。さらに、転職者に対する別の調査では、「人間関係が転職のきっかけになった人」が、53%にも及んでいます。
(中略)
なぜでしょう。それは、「すべての職場は人間関係がよくない」からです。
私は、今まで10ヵ所以上の病院で勤務してきましたが、「人間関係がとてもよかった」という病院は、1ヵ所もありませんでした。どんな組織でも、数十人から数百人のバラバラな性格の人が集まっているので、全員が仲良しというのは、ほぼありえない話です。
このように、そもそも職場において人間関係がよくないことがスタンダードであるために、部下が好きになれないことも当然のことだと言えるのです。
職場の人間関係は、もっと「ドライ」でいいのです。
職場の人と「仲良くなろう」という意識を捨てましょう。「仲良くなる」や「好かれる・嫌われる」ではなく、報告・連絡・相談など仕事に必要なコミュニケーションをすることのほうが、100倍、1000倍重要です。
「上司は、部下に好かれなければならない」「上司は、部下に対して好意的な思いを抱いているべき」といった固定観念に頭を悩ましてしまってはいませんか?上司としてあなたに本当に求められていることは、必要なコミュニケーションをとり、結果を出すことなのです。
脳が勝手に「好き嫌い」を決めているから
「嫌いな部下がいること」を責めなくても良い理由の2つ目は、「脳が勝手に「好き嫌い」を決めているから」からです。
上司として、自分の部下を好きになれないことは辛いですよね。おそらく、「なぜこんなにも部下を嫌いになってしまったのだろう」「どうして部下のことが気に入らないのだろう」と自己嫌悪に近い気持ちになっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし原因は決して、あなたの器が小さいことではありません。実はあなたの「好き嫌い」を決めているのは「あなたの意思」ではなく「あなたの脳の仕組み」なのです。
脳には扁桃体という、危険を察知して警告したり、不安を生み出したりする部分があります。
はるか昔は、動物や天敵といった身の危険を即座に察知し、身を守る準備をする必要がありました。扁桃体のこの危機察知の機能は現代でも残っており、あなたに危害を及ぼしそうな部下がいると、扁桃体は即座に「好ましくない人がいる!」という判断をしてしまうのです。
したがって、部下を嫌いになってしまった自分を責める必要はありません。あなたの脳はあなたを守ろうとしているに過ぎず、大切なことは「どうすれば好ましくない部下とうまく働けるか」を考えることなのです。
部下を嫌いになる原因例
Confident business coach. Corporate coaching. Team of company professionals posing with arms crossed. Copy space on grey background.
みなさんが部下を嫌いになる原因には、おそらく共通してみられるものがあるでしょう。
「この原因で部下を嫌いになっている人は自分だけではないんだ」と感じられることは、あなたがネガティブな感情を受け入れることに役立ちます。
そこで、部下を嫌いになる原因例をみてみましょう。
BiZPARKで紹介されているデータによると、上司に嫌われる部下の特徴ワースト10は、以下のようになっているそうです。
1位 嘘をつく、失敗を隠す
2位 怠惰である
3位 他責思考である
4位 指示した業務すらこなせない
5位 ホウレンソウを無視した仕事をする
6位 挨拶ができず態度も良くない
7位 会社や業務に対する愚痴を言う
8位 コミュニケーションを軽視している
9位 視線が合わない
10位 テクニックが無くPDCAを回そうともしない
BiZPARKより引用
上のランキングから、部下の姿勢・マインド面が不適切なことは、部下を嫌いになる原因になりやすいということがあるのではないでしょうか。
特に、1~3位はテクニックやスキルの不足ではなく、仕事や上司に対して不誠実な姿勢をもっていることが共通点であるといえます。
1位 嘘をつく、失敗を隠す
2位 怠惰である
3位 他責思考である
あなたが部下を嫌いになってしまう原因も、あなた自身が「仕事に対する熱心さ・誠実さ」を重視していることかもしれません。
嫌いな部下に上手に対処する6つの方法
それでは、嫌いな部下に上手に対処するために、どのような技術を使うことができるのでしょうか。
ここでは、以下の6つについて詳しく解説していきます。
- 嫌いな理由を分析する
- 部下の良いところを挙げてみる
- 頼みごとをする
- 目的を達成することに徹する
- アサーティブコミュニケーションを意識する
- 「課題の分離」
嫌いな理由を分析する
嫌いな部下に上手に対処する技術の1つが、部下を嫌いになった理由を分析することです。
「部下を嫌い」な状態が辛いのは、常に「なんでこの部下が気に食わないんだろう」という問いが頭を支配してしまうからです。
一方で嫌いな理由が言語化できると、
「今自分が部下に腹を立てているのは、〇〇が原因だ。」
「〇〇の違いが原因なのだから、この怒りは当然だ。」
という思考に変わり、部下に頭を悩ませる時間が少なくなります。
「なぜ」ではなく「何」で問う
嫌いな理由を分析する際は、「なぜ部下が嫌いなのだろう」ではなく、「何が部下を嫌いにさせているのだろう」と考えてみましょう。
「なぜ」という問いを立てると、
- 「自分の」器が小さいから
- 「部下の」が指示待ちだから
というように、答えが「人」になりやすいといえます。
これでは自分か部下を責めるだけで、建設的な行動にはつながりません。
一方で「何」という問いを立てると、
- 部下に対する教育が不十分であること
- 自分と部下の価値観が大きく違うこと
というように、答えは「環境」「仕組み」「違い」といったものになりやすくなります。
この答えに対して建設的な行動を考えることは比較的カンタンで、例えば
- 部下に対するマインドセット研修をおこなう
- 自分の価値観を言葉にして部下に伝えてみる
といった行動につなげることができます。
部下の良いところを挙げてみる
嫌いな部下に上手に対処する技術の2つ目が、部下の良いところを挙げてみることです。
どんな人も、一度「嫌いな部下」というレッテルを貼ると、その人の悪いところばかりを探してしまうようになります。
「ほら、また今も返事が小さかった」のように悪いところを探し続けていても、部下とうまく対処することにはつながりません。
そこで意識的に、部下に良いところがないか観察し、多少強引にでも良いところを見つけててはいかがでしょうか。
理想は、部下の良いところと悪いところが同じ数だけ挙げられるようになっていることでしょう。
頼みごとをする
嫌いな部下に上手に対処する技術の3つ目が、嫌いな部下に頼みごとをしてみることです。
意外に思われるかもしれませんが、この技術は心理学でいう「返報性の原理」を利用した効果的な方法です。
「返報性の原理」とは、与えられると、(義務感を感じて)返したくなるという人間の性質のことです。
たとえばあなたが部下に頼みごとをすると、あなたは部下に「信頼」と「感謝」を与えることになります。
頼みごとをされた部下は、「上司は自分を信頼しているから頼んだ」と思うことで、上司であるあなたにも信頼を返したくなるのです。同様に、あなたに感謝された部下は、あなたにも感謝の気持ちを伝えたいと思いやすくなります。
ポイントは、「部下を信頼していること」「感謝していること」がしっかりと部下に伝わるように言葉にすることです。
目的を達成することに徹する
嫌いな部下に上手に対処する技術の4つ目が、目的を達成することに徹することです。
ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏は、著書で以下のように述べています。
ただ、だからといって、人格者をめざす必要はないと私は考えています。(中略)
私の答えはこれです。合目的的であることに徹する。これに尽きると思うのです。
「合目的的である」とは、目的に合致する言動に徹するということです。ある部署のリーダーを任されているのであれば、その目的は、その部署に課された目標を達成すること。であれば、その目的に適うことだけをやり、目的に適わないことは一切やらない。これを徹底することによって、結果として、自然と人格は備わってくる。私は、そう考えているのです。
DIAMOND online より引用
クライアントとトラブルを起こした部下に怒って責め立てることは、「クライアントに満足してもらう」という目的に沿っているとは言えません。
「クライアントに満足してもらう」ためには、トラブルの起きない仕組みを作ったり、部下がもっと相談しやすいコミュニケーションを心がけたりする方が効果的ですね。
「部下が嫌い」という感情は受け止めつつも、「今、目的に最も沿った行動はなんだろう?」というように考えることが重要なのです。
アサーティブコミュニケーションを意識する
嫌いな部下に上手に対処する技術の5つ目が、アサーティブコミュニケーションを意識することです。
アサーティブコミュニケーションとは、「自分も相手も大切するコミュニケーション」のことです。相手の意見を尊重しつつも、あなたの考えをはっきりと伝えることです。
具体的なコツは、「なるほど、君はそう考えたんだね。」のようにクッションになる一言を入れた後、「私は、〜のように感じたんだ/考えたんだ。」と明確に伝えることです。
部下の意見を受け止めたことをしっかりと伝えることで、部下があなたの考えを受け入れやすくなり、うまく落とし所を見つけられるのです。
「課題の分離」
嫌いな部下に上手に対処する技術の6つ目が、「課題の分離」を意識することです。
「課題の分離」とは、自分の課題と相手の課題をしっかりと見極めることです。
例えば、「どれだけ部下を鼓舞しても、部下が成長意欲を見せない」という状況があったとします。こういう場合、多くの人は、部下が自分の思い通りに動かないことにイライラしてしまうでしょう。
しかし、「課題の分離」を意識すると、話はかなりクリアになります。
まず、「部下が成長にむかって頑張ること」は誰の課題でしょうか。これは、”部下”自身が成長するかどうか、なので”部下”の課題です。したがって、「部下が頑張るかどうか」をあなたがコントロールすることは、課題の分離に反しているといえます。
一方であなたの課題は、「部下が成長にむけて頑張るように、導くこと」です。あなたがするべきは、自分の指導の仕方を変えることだけなのです。
あなたが指導を工夫することは非常に大切ですが、それに対して「部下がどう行動するか」は、部下が決めることであり、部下の課題なのです。
「部下への指導を工夫する」ことに全力を注ぎつつも、その先の部下の行動は操作できないと考えておくと、きっと気持ちが楽になるでしょう。
まとめ:嫌いな部下との付き合い方を変え、リーダーとしてさらに成長しよう
いかがだったでしょうか。
部下が嫌いになってしまうのは、決してあなたの器の問題ではありません。
- 嫌いな理由を分析する
- 部下の良いところを挙げてみる
- 頼みごとをする
- 目的を達成することに徹する
- アサーティブコミュニケーションを意識する
- 「課題の分離」
本記事でご説明した6つのうち、ぜひあなた自身にマッチする方法から試してみてください。
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